あの子が泣いてる
わたしはなにもできない
ぬぐうも
こわすも
すくうも、


わたしはおおきな皿になる


あの子が泣いてる
なみだの温度はつめたいか
あいをこぼして、あたたかいか



聞いてくれるだけで、いいの。
そういってつづけられた会話

ねえ、わたしのこころは
どこへしまえばいいだろう、



あの子が泣いてる
夜のひざこぞう
ぜいたくななみだでしろくひかった


わたしはおおきな皿になる
しろいしろい皿になる


あの子、泣いているんだろう


あの子のこと、
もうあまり思い出せない


いつからか、
さかさま

わたしはおおきな皿になった

あの子、ざらつく蜜になった




もう、どうしたらいいのかわからないの。
活字の先で、

ねえ
わたしも、
わからないよ










 



やさしくなりたかった
ただもう
ひたすらに


やさしいだけの
やさしいかたまり



まだ硬い革の財布にぐいと指おしこんで小銭をかきあつめている
「あと20秒です」数字がいちにさんと減ってくのを、
そのまま見ている
雨がしのびこむ箱
ころげた五円玉はカーテンをこえてきえた。追わない。
「あと20秒です」
かたい椅子の
上に正座する
暗い長方形はみどりがかって古い水槽を思わせる
浮いた、赤丸の穴でわたし
白い顔してしんでいた




やさしくなりたかった
正さは
わからない


やさしくなりたかった
ただもう、
ひたすらに
やさしく


そうして
20秒後にとりだされた写真
6人それぞれ
なまえをなくしたみたいな顔をして



やさしくなりたかった

なりたかったね、
ただもう
ひたすらに


やさしいだけの
やさしい生き物



紺色の空に月が山吹
今日は、雨がふっているから
あの公園には
行かない




















ばたばた、ばた、と
物事が音をたてて進んでいく
ばた、と鳴る音を聞いているだけで
わたしはここに立ったまま
物事は数歩先へ 倒れている




9月終わりの日に
午後、新幹線にのりこみ京都へいった
チェックインは午後5時で
狭いホテルの白いベッド
知らない街を、知った顔して歩く


ねむれないままに
10月もはじまり、大学へむかう
冷えた空気のバス停で
慣れない栄養ドリンクなんかをのみほしてみて、
どよんとする頭で教室の戸を引く



「人は、暗い箱である」という話が、とてもよかった。

カメラって、部屋とか、箱 って意味 らしい。
そんなことさえ知らない。

知識がすとんと脳におっこちていく感覚は
いつだってきもちがいいもの


自分の不器用さにうんざりもしたけれど
どうにか形になって
午後は大学裏の山にいた
山から、彼に電話をかけて
「いま、山にいるんだよ」
というと
「なにそれ。」と笑っていた




2日めもどよん、とした頭ではあったけれど
きもちは軽く。空も白い。
教室があくのを待っていると
子猫が二匹、駆けてきて わたしの足もとであそびはじめる
あたまをなぜると、指をすこしかまれた


山の中
まっくらい箱になって光を探す。
泣いてる光を線におこす
すべてがなつかしく けれど、初対面で、心臓がうれしい。


午後2時に講評
壁にはられたわたしの絵。きちんと泣いた絵

絵を、すきだ、と言われて
しんぞうがひり とした。

ああ 来て よかったとおもった
結果ではなく
この感覚を得られたことが、なによりも。


すべておわって
だけど軽い身体。


夜、
京都タワーはどきりとするほどに桃色


道がわからず
ひまそうにしていた二人組に声をかけると
そこまで案内するという。

人のやさしさにたくさんふれるよ。

ああ、この人
いい顔してわらう。と、男の人の顔、みてた



まるいきもちを抱いて帰る



数日経って、
結果が出た


わたし、ひとりでインターネット 白い画面の前
番号をみつけて
肺がすこしふくらんで、
だけれど すぐに萎んだ





きもちをかち、と決めてから
あっというまに日々は 進んでしまって
わたしより先に今がある
なんだか。
なんだか、はやすぎる

まだ決めきれないでいる



一度、全部すててしまいたいね


合格
を知って、それから数日
だらしなくねむりつづけて
たまに夜に家を出て
すこしあるいてまたさみしくなる
ああもう、と思う

バーにいて
すすめられるお酒は断れるのに
声かけてくる 見知らぬ人の要求はことわれず
増える知らない名前
ああもう、と思う
おもっている



ばたり、物事はたおれてのしかかり、
だけれど
だらしない身体と脳に、おさめきれない


ああもう、
と知らない名前で鳴る電話をみている

ああもう、
と目が覚めておちかけの陽をみている


ああもう。


しあわせ、と
軽すぎる足でコンクリートを駆けて
すっころんで笑いたい


一度、ぜんぶを捨てること。



きちんとごはんを食べて
きちんと陽をあびて
きちんと物事を右から順々に、並べなおすこと

どんどんと減っていく体重とか
皮膚に浮く赤い点とか
身体をみておもいしる


一度、ぜんぶを捨てること


すべてがたいせつに思えて気が滅入るけど、
きっと
たいせつなものなんて、まだ、なにひとつ持ってやいないし


もうあまり、振り返りたくはないなとおもっている
後ろ向きであるいてくのは、もういいかな。


これからはじまるのだし
いまは、なにも ひつようじゃないよ、
身体ひとつでも平気
明日のために今日を生きたい、きちんとそれだけ。

だって、わたしは。
わたしたちは、これからはじまってゆくのだし。




















 





ただ、しあわせであってと、それだけをおもうのです。



















五月も真ん中


卒業前に彼女とふたり、がっこうからぱくってきた
むかしのデザインの現場をよみふけって
時間をこわしていく日々です

それももう、よみおえた
紙のことも、文字のことも、デザインのこと
なんもかんもわからなくて
それでも ほうほうとうなずいて読む
デザインってすごい。
だなんて
脳足りんにもほどがある感想で本をとじる
よめばよむほど、
まいごだ
よめばよむほど、
自我がうしなわれていく
錯覚か
ぬけおちてく感覚がある
いったいいま、なにをすべきか
わかっている
わからない
うごけない
時間がどんどんこわれていく
一週間前の今日がおもいだせない
一ヶ月前の今日がおもいだせない
5月17日の、25時半
昨日と今日とあしたとが 完全に
地続きである
のびきった土曜日
もしくは
日曜日
「土曜日」
もしくは、「日曜日」として
つぶしている

ほんとうは、火曜日のきょう


日常が、どんどんカスッカスになっていく
それにつれて夢は反対に、濃く緻密になっていく


混乱する
ゆめに、混乱する

かなしくもなく
しあわせでもない夢

一日の大半を、夢ですごしている
生活と夢との質量の差


夢と現実がとっかえられたって
もはやこまらない
むしろ歓迎。
かなしい。

四つの嘘であおいゆうがみてた
高野くんのゆめ
ああいうゆめが、みたいな。

そうして、かえってこれなくなりたい。


めがさめると
天井が近くくるしい


手書きで日記をつけることを、
できるかぎり習慣づけようとまくらもとにおいているのだけれど
日々のからっぽぐあいに書くことがやっぱりない

そんな五月
五月も真ん中

ひとりにはたぶん、なれた。
六月はきらい
「六月」という文字はすき


にせんじゅういちねんに、まだ慣れていない
たぶん。






















もうやめてしまいたい
もうやめてしまいたい
知ることをとめたい
だけれど、知りたい
ひつようとしてほしい
ひつようなんだと言いたい

ふこうになってくれ
ふこうになってくれ
ここへもどってきて
そうしたら
しあわせになって


だから、ふこうになってくれ

もうやめてしまいたい
もうこんなのうみそはすててしまいたい
もうやめだ
もうこんなのうみそはやめだ

どうしてひとりだけ
過去のなかにとじこもっているんだろう
とじこもってなきゃならんのだろう

わたしもつぎへいかせてくれ
わたしもそこへいかせてくれ

忘れたい。
わすれるもんか、と思っていたけれど
わすれたくなんか、なかったけれど
こんなに重たくのしかかり
うごけなくなるようなわたしなら
忘れたい。
いらない。

つぎへいきたいんです



しりたくない しりたい、
もうやめだ

あいたい、とおもう
あいたい、を言えない

あいたい、を言えない距離が
いたい


もうやめだ
こんなのうみそは


忘れたい
いらない
ひつようだ
だけど
いらない
忘れたい


何度、こんな
どうしようもないことばを並べればいいんだろう
こんなことば、みたくない

しあわせをうたっていたい

ばかなことで一日中のうみそふやかしたい
あしたのことでいっきいちゆうしていたい
曜日の感覚をもっていたい
それぞれに感情をいだきたい
だれかのとなりをあるきたい

しあわせをもっと、ぞんざいにあつかいたい
あたりまえだと鼻でわらってしまいたい

もうやめだ
こんな生活、もう
もうだめだ


知ってしまう、
そのたび
とおくにおいやられる
勝手に、
とおくまでいって
勝手に、
かなしんだり
さみしがったり
くやしがったり
勝手に、
いまをひていする

どうしたらいいのかわからないんです
いそがしい日々の
すきますきまに
思い出がつまって
なにも手がつかない
どうしたらいいのかわからない

手をひいてよ、

どうしてこんなことばばかりなのか
わからない
すきなひとが
もういない


ひとりなんて、
なれっこなんじゃ なかったっけ


おもいつきをそのまま口にぼろぼろだしたい
わらってほしい
わらってほしい
ひとりじゃ、
思って、おわってしまうよ
口にだしたい
わらってほしい

ああもう
こんなのうみそじゃ、だめだ


ほんとうに、だめだよ


金曜日って
どんなきもちでいたっけね。

























たかがしれたかなしみでパンパンになって
ころがるみたいに歩く
カメラをおっことして、レンズのしたらへん凹ませた
きもちもいっしょに凹んだ
しょうもないです
年がら年中、しょうもないです
12月からもう 半年もたっているということが
きのうのわたしをおどろかせた
イルミネーションできらきら言う街をふたりで歩いていたの
ついこのあいだで
まだあのとき、あの日の 空気のにおいだっておぼえているのに
1年の半分って、そんなに、こんなに あっけないのか。とおもった
きもちはいまだ
そのへんをうろついて
迷子
たかがしれたかなしみでパンパンで
しょうもないです

ふ、と
いつかあの日々が帰ってくる、とおもっているじぶんに気づいて
たちつくした
みんな
あたらしい生活で、あたらしい人達と
あたらしい環境で、あたらしい生活を

それがおわったとて
かえってくることなんてない
あたらしい今がおわったら、次のあしたがやってくる
どんどんはじまって、どんどんおわる
戻るなんてないんだね

わたしだけ、
なにもはじめることができなかったから
それがいけなかった

いまだれと笑っているかな
泣いたりはしていないかな
いままで聞かせてくれた話のつづきは
いまだれにきかせているんだろう
わたしの想像がいきつかない日常にいる人になってしまったら
それはもう
わたしのなかで存在のない人になる

どんどん人がへる
のうみそがらんどう


しょうもないです

こんな
たかがしれたかなしみで
身動きとれない

しょうもないです


それでも、
この日々があたりまえになってく感覚が
うっすらだけれど
すでにあって

さみしさに
かなしさに
くやしさに
慣れてしまいたくない

その日々が当然になってしまいたくない

おわった日々のこと、
もうたくさん忘れてしまった。

でも、
たくさんおぼえてる。


しょうもないけど、
さみしいです。

























1/12 >>
......